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上顎洞穿刺洗浄をやってみませんか?

 我々 戦前戦後に大学耳鼻科教室へ入局した際、先ず最初に教えられる処置らしい耳鼻科処置は副鼻腔炎に対する上顎洞穿刺洗浄のテクニックでした。当時の子供は’鼻たらし’所謂蓄膿症が多く、治療としては鼻処置鼻洗が主で適当な内服薬も余りなかった。従って重症上顎洞炎には、手術としては古典的な上顎洞Luc-Caldwellの根治手術か、保存的治療法としては懐かしいSchmidt探膿針(注入筒付き)による穿刺・排膿・洗滌に頼っていた。
 戦時中かの有名な 斉藤 勤 元陸軍軍医中将は戦後大津市で耳鼻科医院を開業され、蓄膿症の患者には片っ端から上顎洞穿刺洗浄を行っておられ、当時は怖い先生と恐れられながらも門前市をなす盛業振りでした。昭和41年先生が亡くなられ、何らかの因縁で跡を継いで開業した為、先生が考案され永島医療器で特注されていた写真の様な特殊な上顎洞穿刺針を多量に残しておいて下さった。成程この型の穿刺針はシュミットに比べて使い易く感心した。
私も開業当時は引き続き毎日の様にこの治療を行っていたが、抗生剤等の進歩やネブライザー療法の普及などによる副鼻腔炎患者の減少や、又やはり痛い事は駄目な時代になり次第に減少しており、現在は特に急性の歯性上顎洞炎等頭痛顔面痛が激しい患者には行っている。しかし時々斎藤式の治療をして欲しい来られる年寄りもあります。
単なる耳鼻科処置として上顎洞穿刺50点・副鼻腔洗滌20点は引き合わない為か、医療事故を恐れてか、近頃は他の病院や若い先生方は誰にも教えていないのか、もうとっくに上顎洞穿刺洗滌といったら治療法すら忘れられているのが現状です。事実私自身以前8年程県の社保審査委員をやっていた間、他医院からの上顎洞穿刺洗滌の請求レセプトは皆無であった。
ただ麻酔(4%キシロカイン下鼻道側壁塗布麻酔で充分)とインフォードコンセントさえ上手くやれば出血・余り痛みも無く、勿論外来処置で排膿洗滌後はスッキリとしたと喜んで帰っておられます。
この上顎洞穿刺洗滌処置のテクニックを会得する利点は@小学生以上の子供でも可A副鼻腔造影XP排泄機能検査B上顎洞炎の膿の確証C洗滌薬液注入による治療が挙げられる。危険注意事項としては穿刺ミスによる副損傷(時には眼瞼気腫)、迷走神経反射に基づくショックには注意!
最後に廃れゆく古典的な耳鼻科処置ですが、上述の利点を考慮しても可成の有効な外来治療法として、面倒がらず是非復活して試みて欲しいものと考えております。  

2002.9.記

 

浅嶋耳鼻咽喉科医院
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